あなたに一目惚れ
どうも、TOMです。
滅多にと言っていいほど、初対面では疑い深い目で見るのが自分だと思っていた。
一目惚れまではいかないけど、『好き』になるまでは時間がかかる方だと勝手に思い込んでいたらしい。
それは2017年の年明け早々。
まだ寒さが残る日が続き相変わらず曇りばかりの天気。
それに引きづられて気分も曇天のような灰色だった。
その日は気晴らしのために2、3時間かかる場所に足をのばした。
道中でもくすんだ色は払拭されず時間と風景だけが変わっていき、このままの気分で行っていいものかとさえ思わせるような状態。
その時期はちょうど、仕事の環境や私生活でうまくいかないことが多く、生きがいや仕事に対するやりがいというものが欠けていた時期。
休日でも朝起きるのが辛くて身体も心もしっかり休めていなかった。
だからこそ、少し足をのばしてどこかに行って環境を変えようとした。
そして目的地に近づくにつれて長い暗闇のトンネルの出口に一点の光がさした。
その瞬間
目の前に現れたのはオレンジ色に輝いて、曇天の空を一息で消すような景色。
こんなにも明るくそこにいる人たちの心も顔も自然と笑顔にハッピーにさせてくれる場所があるなんて。
あんなに自分の気持ちがモヤモヤしていた状態から、一瞬で吹き飛ばしてしまようなことが起きるなんて想像も夢でも見たことがない。
360度見渡してもあの景色が包んでくれたのは、あの時すごく大きい意味を持っていたことに気づくのはそう遠くない話だった。
その日のディナーは、メインの通りや観光スポットのようなきらびやかな場所には行かず、ひっそりと路地裏にたち、顔は見えないけど誰かが奥の方から『いらっしゃい』と、優しい微笑みで招き入れているかのような雰囲気のレストランに入った。
気がつけばその時から料理、ワイン、サービス、どれを取っても最高と思わせるように、自分はその店の虜になっていた。
トイレ一つをとってもだ。
初めての経験。
あの彷徨っていた心が息を吹き返し、快晴で雲一つなくなり目の前の出来事にだけ集中して、次は何が来るのか、ただ好奇心だけがそこにはあった。
ここでも一目惚れをしてしまった。タコのカルパッチョ。
一口入れた途端にタコの味と、オリーブオイル、ルコラ、そしてそれらの苦味と生臭さを消す役目を果たしていたのが、豆粒の大きさをしたオレンジ色の果実だった。
そこのお皿の上の2番目である主役は、一番目立たずにひっそりと潜んでいたのである。
それには純粋に感動した。
それらの最高の前菜をさらに引き立てていたのは、店員さんがオススメしてくれたそこの地方のワイン
『Di Allego』という白ワイン
みずみずしい舌触りのそのワインは、とてもスッキリしていて最初に舌に触れると一気に白ぶどうの匂いとほんのりとする甘さが舌に広がったかと感じさせると、すぐにいなくなってしまう
自分の好きなワインを店員さんに教えると彼女は素敵な笑顔でそのワインを説明してくれて、まさに彼女が選んだワインは自分好みのモノだった。
お店に入る前からすでに魔法にかけられていたのかもしれない
と、自分の気持ちを確認していた
そしてメインが登場した。
あれ、、、、
見た目にかけるインパクトは正直前菜に比べると劣っていた
でも、目の前に置かれて数秒後、リゾットからたちのぼる香りはそこの空間を走り抜け、嗅覚と身体全身を刺激した。
勝手に口が『いただきます』と、意識より先に口走った
最初に手が向かったのは、何か隠されているであろう真ん中に堂々と佇むパイの形をしたモノ
フォークを刺した時の、音
それに続いてフォークから伝わる、感覚
その中身は蟹を蒸した料理だった。
匂いと感覚(食感)が二段階で楽しめる料理なんて初めて出会い、頬が崩れた瞬間だった
まさかこんな料理に初日に出会ってしまうなんて、これから先出会わないだろうと無意識に確信した。
何をいおう完食した自分は、静かにフォークを置き
食材と料理人に感謝した
その日はとても幸せになった記憶しかない
景色、天気、人、料理、飲み物
そこにあったモノたちが全て生きていく上で必ず大切なものということをしみじみ実感できた日
そしてこれからの人生で欠かせないピースだと気付いたのだった。
ポルト
それはポルトガルの街
救われた街
これが俺の一目惚れした街。
bis bald
Chao